あまり言及されることは少ないが、スターシップの創業者であるソ・ヒョンジュは、かつて初期のビッグヒットで理事を務めていた人物である。
元々SMエンタのA&Rだった彼女の存在は、SMのシステムを強く意識していたパン・シヒョクにとって、必要な存在だったのだろう。

彼女は2008年、ビッグヒットに所属していた歌手のK.Willを伴って独立し、スターシップを設立する。
そして2010年にデビューしたガールグループ・SISTARが立て続けに大ヒットを記録したことで、アイドル事務所としての成功はビッグヒットよりも一足早く手にすることとなった。
後にK.Willがテレビ番組でパン・シヒョクとの関係を振り返っていることからも、ドロドロとした対立によって別れたわけではないことが窺える。
しかし、当時のビッグヒットにはまだ、優秀な才能を会社にとどめておくだけの体力がなかったとも言え、パン・シヒョク個人としてはどこか複雑な思いを抱いているのかもしれない。
歴史を振り返れば、のちにBTSがグローバルスターへと駆け上がっていく時代にも、チェ・ユジョンという女性副社長が陰で会社を力強く支えていた。
パン・シヒョクの歩みは、ある時期までは常に有能な女性たちの手腕に支えられてきた側面があることを感じる。

その後スターシップは、K-POPシーンに強烈なインパクトを与えるガールグループを何組も世に送り出し地位を確立していく。
一方でパン・シヒョクは、GLAMの手痛い失敗の経験などもあって、ある時期まで「ガールグループの制作には自信がない」と語っていた。
それこそがミン・ヒジンを招聘した大きな理由だったと言われている。
かつて自社を去ったソ・ヒョンジュが築いたスターシップが、巡り巡ってSMと同じカカオ陣営の主力となり、現在HYBEの巨大なライバルとして目の前に立ちはだかっている。このK-POP史の引き寄せた流れを俯瞰すると、なんとも言えない皮肉と運命的な深みを感じずにはいられない。