【内田雅也の追球】阪神“野球小僧”西岡の偽装スタートが呼んだ逆転劇
セ・リーグ 阪神3―1ヤクルト (7月12日 長野)
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2016/07/13/kiji/K20160713012954570.html

 作家ドリス・カーンズ・グッドウィンの『来年があるさ』(ベースボール・
マガジン社)はブルックリン時代のドジャースへの愛着がつづられている。ジ
ャッキー・ロビンソンのファンだった。

 6歳の少女時代、ラジオ中継を聴きながら毎試合、父親にもらった真っ赤な
表紙のスコアブックをつけた。帰宅した父親に見せるのだ。

 「ほら、見てごらん!」とスコアを手に父親が言う。「ロビンソンが二塁で
しつこくピッチャーの気を散らしたから、次の2人のバッターがフォアボール
で満塁さ。これがロビンソンのすごいところなんだ」

 また、大リーグ史上初めて3けた盗塁を記したモーリー・ウィルス(ドジャ
ース)は「アブさん」と呼ばれた。日本で言うハエやカと同じで<うるさい走
者を意味する>と日米の懸け橋となった鈴木惣太郎がスポニチ本紙で紹介して
いる。掲載は104盗塁の翌63年3月1日付だった。<アブさんは投手の気
を散らして味方の快打を狙わせる>。

 ロビンソンやウィルスは快足はもちろん、走者として打者を助ける動きをし
ていたわけだ。

 そんな走者がこの夜の阪神にもいた。西岡剛である。1点を追う8回表、1
死一、二塁。二塁走者として、何度も偽装スタートを繰り返した。マウンドの
相手投手・平井諒を揺さぶったのだ。