鉄拳、強制送還…前時代を知るから…
http://www.daily.co.jp/tigers/2016/07/14/0009283182.shtml

 今の時代では考えられない。広島カープを担当していた1999年。キャン
プ地の日南天福球場で衝撃のシーンにお目に掛かった。練習中、当時ヘッドコ
ーチの大下剛が5年目の福地寿樹の姿勢がなっていないと叱責(しっせき)し、
平手打ちをかましたのだ。カープナイン、そして僕ら報道陣も凍りついた。

 「帰れ!」

 「帰りません!」

 そんな押し問答が数分続いただろうか。強制送還を命じられた福地は、ほど
なくグラウンドから姿を消した。

 「あれは絶対に忘れない…。でもね、自分がこうやって指導者になってみて
思うこともあるんですよ。大下さんが本当は優しい人だと知っていたし、色ん
な表現の仕方があるから。あそこまでやってくれるということは、今思えば俺
ができていなかったんだと思うし、大下さんはあの日まで何度も何度も我慢し
ていたんだと思う…」

 この夜、僕は神宮球場の一塁ベンチへ足を運び、ヤクルト守備走塁コーチの
福地と17年前を懐かしんだ。広島からトレードで西武を経て、FA石井一久
の人的補償として08年にヤクルトへ移籍。同年、赤星憲広をしのぎ盗塁王を
獲得した遅咲きの苦労人だ。昨季三塁コーチャーとしてヤクルトのリーグ制覇
に貢献した福地は今、指導者として、「育てる」醍醐味(だいごみ)を味わっ
ている。