辻発彦監督の著書『プロ野球 勝ち続ける意識改革』から「西武の強さ」を読み解く

辻は冷静沈着な落合博満監督のもとで二軍監督を務めていたときに選手との距離感を学んだという。
「一歩引いて、ちょっと一呼吸置いて、ものをいうコツ」である。昔とは違い繊細な若い選手たちに
「カ?ッときてもいきなり感情をぶつけるのではなく、一呼吸おき、アタマの中を整理してからものを
いうように意識した」と中間管理職の鏡のような考えに辿り着く。

有望な若手選手がいると、時に手柄が欲しいコーチの間で取り合いになることもある。当然、それぞ
れ言っていることが違えば経験の少ない若者はパニック状態になってしまう。辻はまず選手本人の意
向を確かめ、その上で各コーチ陣の話をまとめて指導の方向性を決定。結果が出なければ次は違う方
法を試すやり方を徹底させた。「選手は自分で努力して、勝手に成長する。コーチはその手伝いでし
かない。ヒントを与えて、あくまで成長の手助けをするだけ」というスタイルである。

辻は自身の現役時代のルーキー清原和博の育て方を見て学ぶ。評論家だけでなくコーチ陣からも新人
は二軍でしばらく鍛えた方がいいという声が挙がったものの、堤義明オーナーの意向に加え一軍で使
い続けた方が伸びると判断した森監督は清原を一軍で「区別」して起用するのだ。

辻はそんな森采配を尊敬し、同時に前任者のそのスパルタ指導でベテラン陣からは嫌われていた広岡
達朗監督にも「あの厳しさが私を鍛えてくれた。もしも最初からぬるま湯につかっていたら…。若い
頃の苦労は買ってでもしろというのは、やはり本当だと思う」と感謝すら書き残している。この異様
なポジティブさこそ辻の最大の武器だろう。ちなみに5日に13連勝が止まった試合後コメントはチーム
の善戦を称える「俺は楽しかった」である。

若手時代は広岡管理野球、全盛期の森西武、晩年はヤクルト野村克也のもとでもプレーした。著書で
はなんら愚痴ることもなく、そのノムさんと高度な野球理論を楽しみ、中日コーチ時代に仕えた落合
博満監督に対してもオレ竜の決断力を絶賛。決して彼らをディスらず、歴代名将たちの短所ではなく、
いつも前向きに長所を見て吸収してきた男。

https://baseballking.jp/ns/column/127039