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 「いいところは多かったんじゃない!? 忘れたわ」。目を細めた指揮官だが“忘れ
られない”盗塁は、熊谷が決めた。2軍で23盗塁した来季2年目の韋駄天は六回、無
死から安打で出塁すると、警戒するLGバッテリーのわずかな隙を突いた。

 捕手が投球を捕球した瞬間に意表をついてスタートを切り、ディレードスチールに
成功。シーズンでも滅多にない“秘策”。指揮官が「アレ、よくなかった!? (2軍
の)シーズンでもあまりできていなかった。幅を広げる走塁やったな」とうなずけば、
この日2盗塁の熊谷も胸を張った。

 「(ディレードは)試したいと思っていました。清水ヘッドコーチや壮さん(筒井
外野守備走塁コーチ)にアドバイスをいただいてきましたし、練習でやってきたこと
が出せてよかった」

 今季17年ぶり最下位に沈んだ虎のチーム盗塁数はリーグ2位の77(広島は95)。
足を絡めた攻撃を進化させ、一発長打だけに頼らない幅広い野球を−。目指す形を、
秋からはっきりと示した。

 「俺がキャッチャーやったら、すごい嫌なのよ。配球も変わったり、キャッチング
もちょっと腰が浮いたりとか。投手だって集中できない」と矢野監督。かき回される
怖さを誰よりも知る捕手出身。だからこそ仕掛け続ける。秋季キャンプはきょう18
日が打ち上げだが、ワクワク感は止まらない。来季、虎戦士が風のようにダイヤモン
ドを駆ける姿が目に浮かぶ。 (新里公章)