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極論を言えば、不祥事があっても教科書には残ってしまう。だからこそ、人間性に関する調査は非常に慎重に、多方面から情報を集めるが、大谷の場合は信頼を得るまでさほど時間を要さなかった。

 学生時代にさかのぼって調査をしても、マイナスな要素が出てこない。「これなら」と判断し、当時所属していた日本ハム球団に依頼。大谷本人の「教育に役立てるのであれば」と快く応じる旨の反応が伝えられ、2018年度の教科書で取り扱うことが決まった。

 100人以上の候補の中から、前例のない二刀流選手として日本球界を席巻していた大谷を採用した。海を渡ってからの姿を見て「起用に間違いはなかった」と確信している。野球の実力は言うまでもない。それ以上にゴミを拾う姿や関係者とのコミュニケーションなど、礼儀や品格の面でも日本の誇りと感じられるからだ。

「ゴミを拾う姿だって『拾うぞ!』と拾っているわけではなく、自然に出ていますよね。彼が高校生の時の目標達成シートを見返すと、『運』の項目に挨拶、ゴミ拾い、道具を大切にするなどあります。昔から大谷さんの思考にあること、自然体なんだと改めて思いました。周りの方との出会いとか、育った環境も影響しているのかもしれませんね」

 2021年MVPに輝いた大谷も、18年10月には右ひじのトミー・ジョン手術を経験するなど、苦しんだ時期はある。ただ、道徳の教材としては「人間誰しも上手くいかないときはある」と伝えられる部分だ。「失敗しても振るわなくても、それは次の目標を達成するための過程ということ」。全てにおいて成功している人物を取り上げればいいわけではないのも、道徳の奥深さだ。

教科書で取り上げる人物の男女比、職業などのバランスを考慮した結果、大谷は小学5年生の「夢を実現するためには」のみに登場したが、他のテーマでも十分取り上げることは可能だったのではないかと渋谷さんは明かす。

「例えば『人の強さや気高さを理解し、生きる喜びを感じる』というテーマ。大谷さんは気高さもあるし、そんなことを考えて行動していないかもしれないけれど、ある人が見たら『この人が野球で頑張っていることそのものが、生きている良さなんじゃないか』と感じる人もいるかもしれません。