「ウサギとカメ」
作.手ぶらの乞食


ある夏の日の午後、ウサギはカメに言った
「どっちが速いか競争しようぜ」

ウサギはただ、ただ優越感に浸りたかった。

「いや、僕はノロマだから」
カメはため息混じりに言ったがウサギにイジメられるのが嫌で渋々承諾した。

ウサギはカメに100メートルのハンデを与えた。
というのも、ゴール間近で抜く快感を味わいたかったからだ。

よーいドン!

カメは100メートル先で必死に走り始めた。

ウサギはニタニタしながら余裕綽々で道路脇の草を食べながら道草を食った。

やがてカメはやっとこゴール間近まで来た。
喉は乾き、干からびた皮膚が尚一層カメの悲壮感を際立たせた。

カメにとって勝敗などどうでも良かった。
早く終わらせたかった。

「よし今だ!」
ウサギは待ってましたとばかりに猛ダッシュをかける。

と、その時である。

ハーレーダビッドソンが猛スピードでウサギを抜き去った。

カメはゴールを目前にして言った。
「後ちょっと、後ちょ…」

カメの声が途絶える。

鈍い音がした。

硬い甲羅が紙の様にひしゃげる。

ハーレーのタイヤに踏み潰されたのだ。

ひしゃげたカメはハーレーのタイヤに張り付いたままゴールを切った。

タイヤはカメを張り付けたままアスファルトを蹴散らして地平線の彼方へと消えた。

道路脇の草がゆらゆらと揺れている。

かげろうに歪むアスファルトの上で
モンシロチョウがひとひらの花の様に舞っている。

まるで何事もなかったかのように。

そんな夏の日の午後のこと。

完