マーガレット・バーカー(Margaret Barker)は、イギリスの聖書学者であり、「神殿神学(Temple Theology)」という独自の分野を提唱しています。彼女は、聖母マリアが単にイエスの人間的な母親であるだけでなく、旧約聖書の時代から存在していた、「知恵(Wisdom/Sophia)」または「天の女王(神殿のレディ)」の顕現であると主張しています。

彼女の説の主なポイントは以下の通りです。
1. 知恵としてのレディ(Lady Wisdom)
バーカーによれば、古代イスラエルの神殿信仰において、神(ヤーウェ)には「母」または「配偶者」となる女神が存在しており、彼女は「知恵(Lady Wisdom)」と呼ばれていました。これは、後のヘブライ聖書(旧約聖書)の改革によって正典からはほとんど除外されましたが、神殿のシンボルや隠された伝統の中に残っていたとされています。


2. 神殿のレディの継承者としてのマリア
バーカーは、処女マリアがイエスを産んだという物語は、単なる出来事ではなく、神殿の女神(知恵)が地上に現れた(受肉した)ことの再解釈であると主張しています。初期キリスト教徒は、マリアを「天の女王」や「知恵の体現」として捉えており、彼女がイエスを生んだことは、失われていた「神殿の女神」の伝統が戻ってきたことを意味すると彼女は分析しています。

3. バーカーの主要な論点
神殿のレディ: 古代イスラエルの第一神殿では、ヤーウェの配偶者(または母)である「レディ」が崇拝されていた。
知恵の顕現: 「知恵」は、神の創造力や神殿の女神として人々に知られていた。
マリアの役割: バーカーは、マリアは単に歴史上の人物であるだけでなく、旧約の「知恵」がキリスト教において「聖母(Theotokos)」として再発見された姿であると論じています。

この説は、従来のキリスト教神学とは異なるアプローチであり、聖書考古学や神殿研究に基づく、非常にユニークかつラディカルな主張として知られています。

関連書籍:
The Mother of the Lord: Volume 1: The Lady in the Temple (2012)
The Great Lady: The Mother of the Lord (2024)