http://www.nikkei-science.com/?p=16686
続き。
今回の実験は,量子力学を覆すものではありません。
超光速ニュートリノが本当だったら相対性理論はひっくり返ってしまいますが,
ハイゼンベルクが間違えていたとしても,量子力学の基本方程式は変わりません。
小澤の不等式はそれ自体,量子力学の枠組みによって成り立っています。
ハイゼンベルクの式ではできないとされていた測定を可能にする小澤の式は,
むしろ量子力学の可能性を広げるものと言えるでしょう。
古典力学は,今がわかれば確実に未来が予測できる理論です。
これに対して量子力学ではあらゆるものが曖昧で,確率的にしか決まりません。
当初この「不確定性」は,何かを作ったり実験したりする際のノイズであり,
邪魔ものだとみなされていました。
ところが近年,このあいまいさは,
古典力学では実現できない情報処理を可能にする
新たなリソースと捉え直されるようになりました。
小澤教授の観測の理論は,
量子力学の曖昧さの中身を厳密に整理し直したものです。
量子コンピュータや量子暗号など,
新たなリソースを利用する量子情報技術の研究の有力な武器になっています。
小澤の式が成立し,
ハイゼンベルクの式が成立しない測定があることが実験で確かめられた今,
小澤の不等式が,量子力学の基本的な世界観を構築する新たな柱となっていくでしょう。
ハイゼンベルクの式に代わって教科書に記載される日も近いと思われます。