絶対ゼータ関数論
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ゼータ関数論の大家がリーマン予想解明の本命「絶対ゼータ関数論」を解説する素敵な成書
By susumukuni - 2016/3/20
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絶対ゼータ関数は21世紀になって発見された新たなゼータ関数であり、3種の数論的ゼータ(アルティンL関数、ハッセL関数、保型L関数)とセルバーグゼータの4種類のゼータ関数を統一する「超ラングランズ予想」の解明に基本的な役割を果たすと期待される「本命」である。
本書はこの分野の研究で世界をリードする黒川先生の手になる「絶対ゼータ関数論」の初の成書である。本書を通読して、印象に残った事、気づいた事などを以下に述べてみたい。

 本書の大きな特徴として、群の表現による絶対ゼータ関数の構成、および絶対保型形式から導かれる絶対ゼータ関数の構成の解説の素晴らしさを挙げたい。
良く知られている様にセルバーグゼータ関数では、その定義に考察の対象となる空間の「素測地線全体」、或いは同じことだがその空間の「基本群の素共役類全体」が現れる。
1元体F1の基本群は正の実数がなす乗法群Γであるから、F1上のゼータ関数である絶対ゼータ関数に、Γの仮想表現や類関数である指標がその構成要素として現れるのが自然であると理解する事が重要だと思う。
幾何学的なゼータであるセルバーグゼータを含むゼータの統一理論では、代数体のガロア拡大に対応する空間のガロア被覆が基礎空間の基本群の部分群で統制される事を思えば、F1の基本群やその表現が現れるのは極めて自然である訳だ。
「表現の絶対ゼータ関数」で興味深いのは、仮想表現の絶対ゼータ関数は定義から(超)行列式表示を持つが、その表現の超トレースのメリン変換から導出される保型ゼータ関数に一致し、更に仮想表現が自己共役、ユニタリである場合には
超トレースは重さゼロの絶対保型形式であり、絶対ラングランズ対応、及び行列式表示を持つゼータ関数はリーマン予想の類似を満たすことの一つの具体例が示されている事である。

 絶対ゼータ関数論における近年の大きな進展として、著者による絶対保型形式の発見が挙げられる。
Z上の基本的な代数的集合の個数関数は絶対保型形式の具体例になるが、本書ではそれらを含む絶対保型形式の族として「円分絶対保型形式」とその絶対ゼータ関数が詳しく考察されている。
この族の絶対ゼータ関数の性質(全複素平面に有理型関数として解析接続される、多重ガンマ関数による表示、関数等式、リーマン予想の類似の成立)を述べる第4章の定理4.2と絶対極限公式の具体例に言及する第6章の定理6.2や問題6.4などが本書で最も面白い結果だと思う。
本書では絶対ゼータ関数の絶対オイラー積まで考察されており興味深い。