>>64 つづき

戸田盛和先生
http://www.jps.or.jp/books/50thkinen/50th_03/004.html
特集 日本物理学会50周年記念(第51巻, 1996) 第51巻3号 50年をかえりみる
格子ソリトンの発見 戸田盛和*

2. 非線形格子の再帰現象
最近の非線形問題研究の発端は,世界的に見ると上述のエルゴード問題に関するFermi−Pasta−Ulam(FPU)の計算機実験2, 3)であった.
Fermi は若いときにこの問題を考察したことがあり,1950年代はじめに当時発達してきた計算機を使って数値的にこれを再び吟味しようとしたのである.
彼は非線形格子の振動では線形モード間の結合によって運動が乱れてエルゴード的になるであろうと予想したのであるが,数10個の同じ質量の粒子からなる1次元格子に対する数値計算では,線形格子に似た周期的な運動がおこなわれることが発見された.
この再帰現象をくわしく検討するため,J. Ford4)は数個の粒子が非線形相互作用で結ばれた小さな体系を非線形摂動論と数値計算で調べ,この体系にも線形格子に似た固有振動が,少くとも近似的には存在することを確かめた.
このFordの短い論文は私が非線形問題に入り込む直接の原因になった.Ford論文にはその計算の動機はFPUの研究であると明記されてはいたが,FPUは研究所の報告として出版されたもので当時は見ることができなかった.
しかし情報が多すぎると目移りしがちになるから,参考にしなければならない論文が少なくて自分の考えに集中できたのは,かえって幸いだったと思う.そのため積分可能な非線形格子モデルをはじめてジャーナルに発表したときの参考文献は,Fordの上記の論文と数学のテキスト一つだけであった.2, 5)

3. 周期解をもつ非線形格子の発見5)
そのときちょうど夏休みで海岸の避暑地にいて手もとには数学辞典など少数の本しかなかったが,幸い巻末の公式集に楕円関数も含まれていたので,これをもとにしてあれこれと楕円関数を独学することになった.

つづく