>>24 つづき

7. 興味がある研究対象の発見

学部生のときに「量子測定理論なんてくだらない」と習ったのに、実際には正反対で、精度が高い実験の結果は、量子測定理論なくしては理解不可能だったのだ!
そのことを骨の髄まで味わったのは、実際にこの方向の研究を始めてからだった。
ある日私は、野蛮人の直感で、メゾスコピック電子干渉計をうまく構成すれば、光子数の量子非破壊測定ができそうだと思いついた。
ところが、それを理論計算で実証しようとして愕然とした。どうやって計算して良いのか私にはさっぱり分からなかったのだ。
しかし、全ての物理系が量子論で記述できるのであれば、測定器だって物理系だから、測定の反作用や測定誤差も、原理的には量子論で計算できないとおかしい。
それなのにどうやって計算していいか分からないというのは、私の量子論の理解に大きな穴があったということを意味する。
私はそれまで、まわりの物理学者と比べて、量子論の理解において自分が劣っていると感じたことは一度もなかったのに、「おまえは実はわかっていない」という事実を初めて突きつけられたのだ!
それまでの私は、「普通の」物理の問題(ハバードモデルとか超伝導とか電気伝導とか励起子)しか扱ってこなかったので、その事実に気づかなかっただけだったのだ。
そこで、量子測定理論を含めて、量子論を一から勉強し直した。
後に量子論の教科書を書いたときに、(拙著「新版量子論の基礎」7.4 節などに)量子論の根本原理に関して様々な立場を俯瞰して書くことができたのは、このときの修練が役立っている。

つづく