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つづき

余談だが、homomorphism の訳語として、準
同形ということばが定着している。これは、同形も
どきという意味だから、同形がだいじというブルバ
キの思想を反映したものといえよう。射のほうが基
本的という、より現代的な視点にはそぐわないが、
いまさら変えることもできないだろう。

それはさておき、射を重視するこの視点は、理
論を非常に柔軟なものにした。以前、フランスで開
かれた研究集会のときに、夕食後ワインを飲みなが
ら、グロタンディークが代数幾何にもたらしたアイ
デアの中で、いちばん影響力の大きいものは何だろ
う、という話題になったそうである。そのときのセ
ールの答が、この、射を基本的な対象と考える相対
的な視点だというもので、それに一同納得したとい
うことである。底変換(base change)と対をなす
降下(descent)の考えも、こうして可能になったもの
だが、局所的に考えるという数学の基本的な手法の
射程が、はるかに拡張されている。

SGA1

SGA1 で扱われているのは、代数的基本群であ
る。基本群とガロワ群は、実は同じものであるとい
う視点を全面にうちだし、圏論的に根の置換とは何
かという問題を、明らかにしたものである。この方
法は、のちのモチーフの理論でも、淡中圏の基本群
として再登場する。

SGA4,5

エタール・コホモロジーを定義し、それを使っ
て、合同ゼータ関数の有理性と関数等式を証明して
いる。グロタンディークの業績の中でも、いちばん
有名なものかもしれない。「交信録」をみれば、セー
ルとグロタンディークが、ともにヴェイユ予想の解
決への鍵であるコホモロジー理論をめざして研究を
進めていたことがわかる。

つづく