つづき

背格好も顔つきも似ているため、社内で「兄弟」とも言われる2人は、グーグルとはちょっとした因縁があった。2006年、グーグル会長のエリック・シュミットはシンたちが韓国で立ち上げたばかりの検索ベンチャー「チョンヌン」を買収しようとソウルを訪れた。横やりを入れたのがイだった。資金力ではグーグルにはかなわないが「一緒に世界に出よう」と説得して、シンを仲間に引き入れた。

■グーグルとの因縁

その時誓った世界進出。2008年、東京に渡ったシンは「ここで成功しなければ帰らない」と決めた。

「韓国での成功体験は捨てろ」。イは日本に向かうシンにこうクギを刺した。ネイバーは韓国でグーグルの攻勢を跳ね返し検索最大手の地位を守っていたが、その手法を持ち込んだだけでうまくいかないことはわかっていた。多くの企業が海外に進出する際に口にする「ローカライゼーション」。そのレベルでは日本で戦えない。日本の文化を取り込んだ「カルチャライゼーション」を徹底しろと、イは命じた。

2011年3月10日。シンは来日していたイを夕食に誘った。ビールを傾けながら、誰にも打ち明けたことのない弱音を、イに漏らした。

「撤退の基準を教えてください。いつまでに何ができないと日本を撤退すべきか」

イはシンに返した。「もしそうするなら僕はまた新しいチームを日本に送り込む。彼らになぜ失敗したのかをちゃんと説明してほしい。それを約束してくれればいつ辞めてもいい。でもね……」

■「君が諦めたら終わりだよ」

イはこう断言した。「君が諦めたらそこで終わりだよ」

シンは5歳年上のイを「先輩で先生で、一番リスペクトする人」と言う。そのイがじっと目を見据えて不退転の覚悟を迫っている。

「怖かった。初めて限界だと思った。でも、ここで辞めたらほかの犠牲者が出る。ここで辞めるのはずるい。正面突破するしかない、ここで終わりたくないと思いました」

つづく