>>521

つづき

この Deligne の仕事は,大
域的 Langlands 予想における「Galois 表現の構成問題」の特別な場合に位置付ける
ことができる.(GLn の)大域的 Langlands 予想とは,代数体 F に対し,GLn(AF )
の保型表現(のうち特別なもの)と Gal(F /F) の n 次元 ? 進表現(のうち特別なも
の)の間に自然な一対一対応が存在するという予想であり,そのうち,保型表現 Π
から始めてそれに対応する ? 進 Galois 表現 ρ(Π) を構成する問題が「Galois 表現の
構成問題」である.この問題は今日でも完全に解決されてはいないが,できている
場合も比較的多く,それが Sato-Tate 予想の完全解決をはじめとする最近の整数論
の発展の基礎となっている.Galois 表現の構成についての詳細は吉田輝義氏の記事
を参照していただくことにして,ここでは,現在知られている Galois 表現の構成
のほとんど全てがエタールコホモロジーによるものだということを強調しておきた
い.保型表現の合同関係を用いる方法(例えば [DS])も有名であるが,これは別の
場合([DS] では重さが大きい場合)に対応する Galois 表現が既に構成されている
ことを用いるので,結局エタールコホモロジーが必要となる.近年では Galois 表
現の代数的取り扱いに関する研究の進歩が目覚ましく,ついそちらに目が行きがち
になるが,そのような理論とともにエタールコホモロジー論をはじめとする数論幾
何学が Galois 表現の研究を支えていることをこの記事を通じ改めて喚起できれば
と思っている.また,エタールコホモロジーの応用範囲は整数論や代数幾何にはと
どまらないことにも言及しておくべきであろう.例えば,有限 Chevalley 群の既約
表現の構成(Deligne-Lusztig 理論)や Kazhdan-Lusztig 予想など,表現論におい
ても重要な役割を担っていることは有名である.

つづく