つづき

SPARCかArmか、悩まされた採用CPU
 京が抱えていた課題を解決すべく、富岳は、「省電力」、「アプリケーション性能」、「使い勝手の良さ」の3点を重視して開発したが、その上で、CPUの選択は大きな決断の1つだった。

 京の流れを汲んだSPARCとするのか、あるいはArmにするのかといった検討は、2013年頃に行なわれていた。

 もちろん、対応アプリケーションの広さを考えれば、x86という選択肢もないわけではないが、「Intelのx86には、ライセンス制度の問題があり、x86系のCPUを自分たちで作るには、どこかの会社を買収しないかぎり難しい。それに対して、Armであれば、ライセンス費用を支払えば、CPUを作ることができる」(松岡センター長)として、早い段階でx86は候補から漏れ、SPARCか、Armかの2択になった。

 「私の理解だと、理研のほとんどの人たちはArmだと言っていたが、富士通のなかではArm派と、SPARC派に分かれていたようだった」(松岡センター長)。

 富士通には、SPARCで動いていたソフトウェアが多数あり、それを捨てて、Armに移るリスクが大きいとの声があったようだ。

 だが、「80年半ば頃は、SPARCには高い評価が集まり、さまざまなツールが用意されていたが、2010年代に入るとそういう状況ではなくなっていた。プログラム開発のためのツール群をはじめとするソフトウェアスタックが少なく、その点で、x86やArmとの差が開いてしまった」(石川プロジェクトリーダー)という状況も見逃せなかった。

 松岡センター長は、「採用するのは、メインストリームと言われるCPUでなければいけないと判断した。アプリケーションの開発に3年も、4年もかけて、ようやく使えるというものではいけない」と、Armに決定した理由の1つを語る。

富士通がゼロから開発した「A64FX」CPU
 富岳では、京のアプリケーションを利用できる互換性を維持しながら、オープンソースアプリにも対応。GCCやPython、Ruby、Eclipse、Docker、KVMが利用できる。また、レッドハットのRed Hat Enterprise Linux (RHEL)8.1を採用していることから、あらゆる領域において、コンピューティングリソースを活用できる地盤がある。

つづく