これ、いいね

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読売新聞
[時代の証言者]天文と化学を結ぶ 岡武史<9>数学者がアイドル 2023/11/16

 大連では、母の友人宅にしばらく身を寄せた後、旅順工科大学で父の教え子だった 柏原かやはら 健二さんという方の家へ移りました。このお宅で、藤森良蔵・良夫親子の「学び方、考え方と解き方」という数学書に出会います。計10巻ぐらいのシリーズのうち、比較的やさしい数巻が書棚にあったのを借りて読み、取りつかれました。

 実は小学校の時、ふと手にした中学の代数の教科書が面白くて、それから数学にのめり込んでいました。鶴亀算も、方程式を書いて解けば簡単でしょう。「数学って便利だな」と思ったんです。藤森親子のシリーズはたぶん大学レベルですが、これを読んだ時はもう、三角関数や微分、順列組み合わせの話がすっと分かった。残りの巻は古本屋で買い足し、最後の複素関数論まで読み切りました。

 もう一つ、大事な数学書との出会いがありました。英国の数学者ホイッテーカーとワトソンが書いた、「コース・オブ・モダンアナリシス」(現代解析学講座)という古典的な教科書です。

 1946年の暮れ、旅順工大で父が親しかった物理学者の木谷要一教授が亡くなり、奥様が蔵書の処分を父に頼んできました。柏原さん方の我が家は8畳一間。そこに積み上がって、寝る場所がなくなるほどの量です。木谷先生は、旅順で追い立てられた時も「本は学者の生命だ」との一念で、大切に持ち出して来ていたのです。

つづく