伊能忠敬の師匠の高橋至時の後輩にあたる
足立左内とロシアのエリート士官である
V.M.ヴォローニンの出会いも面白い。

ある時, 足立は「オランダ語では新暦(グレゴリオ暦)を使っているが,ロシアではどんな暦法を使っていますか」と私にたずねた。「ロシアではまだ旧暦(ユリウス暦)を使っています」と私が答えると, 彼は新暦と旧暦にはどんな相違があるか, どうしてその相違ができたか教えてくれと言った。私の説明が終わると, 彼は「その暦法(グレゴリオ暦)もまだ完全ではありません。なぜかというと, 一定の世紀ごとに再び24時間の差ができるからです」といったので, 私は彼自身がよく承知した事柄について, 私がどれくらいの理解を持っているかを試すために,こんな質問をしたのだと悟った。

日本では幾何学上の真理をどんなふうに証明するか知りたかったので, われわれは足立にこうたずねた。「日本人もわれわれと同様に,直角三角形の--と私はそれを図示した--両辺の平方の和は斜辺の平方に等しいと思っていますか」

「むろん, その通りです」と彼は答えた。「なぜです」とわれわれがたずねると, 彼は最も争いがたい方法でそれを証明した。というのはコンパスで紙上に図形を描き, 三つの正方形を切りぬき, そのうち両辺の長さから取った二つの正方形を折ったり切ったりし, それを斜辺から作った正方形の上にのせて, ぴったりとその全面積を蔽ってしまったのである。