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www.math.nagoya-u.ac.jp/~shinichiroh/2023/07/31/tips-of-set-theory.html
松尾 信一郎
名古屋大学 大学院多元数理科学研究科 准教授

集合論の覚書
基礎と基礎付け
「ZFCと一階述語論理が数学の基礎だ」という言い方がしばしばなされるが,「ZFCと一階述語論理で数学は基礎付けられる」と言った方が誤解も反発も招かないだろう.
前者の基礎というのは,例えば位相空間論は数学の基礎だとか多様体論は幾何の基礎だというような使い方を連想させ,そうすると,別に私はZFCの公理系なんて知らないしそれで困ったことはないというようなよくある反発を招きがちで,実際,そういう意味では,ZFCは,集合論の研究者以外には,数学の基礎ではないだろう. 本当に伝えたいことは,現代数学を形式化したものはZFCと一階述語論理(と+α)の部分体系として記述できるだろうという経験則で,そのためには後者の言い回しがよいだろう.
渕野昌さんによる圏論と集合論を参照のこと.fuchino.ddo.jp/misc/category-vers-sets-2020-x.pdf

集合ではないもの
全ての集合からなる類は集合ではない.
対の公理から,任意の集合
xに対して{x}は集合である.
基礎の公理とは,∀x[x≠Φ⟹∃y[y∈x∧y∩x=Φ]]
のことであり,1925年にvon Neumannにより導入され,正則性公理や正礎性公理とも呼ばれる. さて,基礎の公理から,
∀x[x not∈x]である. 実際,空でない集合
xがx∈xを充たすとすれば,
x∩{x}はxを含むので空集合ではなく,一般に
xは{x}
の唯一の元なので,基礎の公理に矛盾する.
全ての集合からなる類を
Vとする. Vが集合であると仮定する. このとき,
Vの定義から,V∈Vである. しかし,∀x[x not∈x]であった. よって,Vは集合ではない.
注:
Vが集合ではないことは,Russelの逆理と内包の公理からもわかる.
注:Mくんから教えてもらったのだが,
Vが集合ではないことは,対角線論法からもわかる: もしも
Vが集合であれば,
Vのベキ集合P(V)
も集合の集合なので,P(V)⊂Vである. よって,
|P(V)|≦|V|
である. ところが,Cantorの定理により,
|V|<|P(V)|
である. 矛盾.
注:渕野昌さんによる説明 jp.quora.com/%E9%9B%86%E5%90%88%E8%AB%96%E3%81%A7%E3%81%AF-%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E9%9B%86%E5%90%88%E3%81%AE%E9%9B%86%E5%90%88-%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%84