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5月2日 編集手帳
2026/05/02 読売新聞[読者会員限定]
 「かなし(い)」は、師の折口信夫がどこまでも解読を試みた言葉であった。<美しくかなしき日本。わが胸のほむら鎮めて雪ふりしきる>。岡野弘彦さんの歌である
◆歌集『美しく 愛 かな しき日本』から引いた。東日本大震災のあと、犠牲者と災害に打ちひしがれる遺族の悲しむ愛を受け取って詠まれたのだろう。これが古代より美しさと悲しみに縛られた日本という国の原風景とすれば、胸苦しくてならないのである
◆現代に息をしながら、短歌の美を流麗な文語の調べに求めた岡野さんが101歳で亡くなった。昭和天皇をはじめ皇室の和歌の相談役を長く務め、皇室文化の継承にも多大な貢献をした
◆先の歌集に戦争の歌もある。<友多くかへらざりけり。焼け原の丘に残れる大学の門>。三重県の神主の長男に生まれ、国学院大文学部予科に進み、召集を受けた。終戦後に復学し、講義に出席すると空席が目立った。学徒出陣したまま、帰らなかった級友たちの姿をそこに見た
◆岡野さんの作品のなかには、通常は短歌で使わない句点「。」がみられる。呼吸がいったん止まるほどの深い「かなし(い)」だろうか。