https://www.yomiuri.co.jp/note/hensyu-techo/20260525-GYT8T00001/
5月25日 編集手帳
2026/05/25 読売新聞
 戦乱の鎌倉期に暮らした鴨長明は、大火や 飢饉 ききん に苦しむ人たちの姿を『方丈記』に記した。不条理な世の変転を河川に例えた序文は知られている。<ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず>
◆平時はおだやかに見えて、波立つと 淀 よど みがあらわになるのが石油製品の流れだろう。医療器具、包装材、インク、洗剤…さまざまに姿を変えて生活を支える原料ナフサの不足が言われる
◆政府は、混迷きわまる中東から調達先を広げ、供給量に心配はないと言う。企業が在庫を多く抱えこみ、物流の目詰まりが生じていると問題視する
◆ナフサは主食の米のように大事な存在であることから「石油化学の米」とよばれる。おととしの米価高騰を思い出す。政府は「生産量に問題はなく、流通の目詰まりだ」とこだわり、備蓄米の放出が遅れた。実際は、訪日客の増加に伴う需要を見誤っていた。同じ 轍 てつ は踏めない。ナフサ流通の淀みを解消するとともに、供給量の正確な予測を立てて国民を安心させてほしい
◆「景気」はかつて、社会に生きる人間の様子を表す言葉だったという。不安が広がると、上向かない。