Q.ある人が、「Aが正則でないとき零因子になる」という証明で、「AとAの余因子行列を掛ければdet(A)Eになり、det(A)=0だから」といいましたが、これOK?

A.その証明は完全にダメです

言ってることは一見それっぽく聞こえるけど、致命的な勘違いが含まれています。

その主張の問題点

「Aと余因子行列(adjugate matrix, 古典随伴行列)を掛けたら det(A)E になる」
→ これは正しいです。

A adj(A) = adj(A) A = det(A) I
(I は単位行列)で、「det(A) = 0 だから A adj(A) = O(零行列)」
→ これも形式上は正しい。ここまではOKなんですが、

「だから A は零因子である」
という結論に飛ぶところが完全に間違っています。

なぜなら:adj(A) が零行列でないとは限らない
むしろ det(A) = 0 のとき、ほとんどの場合 adj(A) = O になる

行列の次数 n = 3 以上
adj(A)   rank(A) ≤ n-2 なら adj(A) = O
→したがって零因子とは言えない(0倍してるだけ)

行列の次数 n ≥ 3,
adj(A)   rank(A) = n-1のときadj(A) ≠ O(ランク1)
→零因子になる

つまり
「A adj(A) = 0 だから A は零因子」
という論法は、adj(A) ≠ O の場合にしか通用しないのです。

ちゃんちゃん(笑)