>>192
「査読を通って出版されたのだから望月氏の勝ち」ではない

ここは重要です。

望月氏の4論文は2021年に
Publications of the Research Institute for Mathematical Sciences(PRIMS)
に掲載されました。
しかし、掲載されたことと、ABC予想の証明が数学界で承認されたことは別問題です。

しかもPRIMSは望月氏自身が編集長を務める雑誌だったため、
この出版はかなりの論争を呼びました。
もちろん、編集長が自分の論文を掲載すること自体が
直ちに不正というわけではありませんが、
「通常の意味で独立した数学界のコンセンサスを得た」
という証拠にはなりません。

では、ショルツェの「反証」は完成しているのか?

ここは違います。

ショルツェがやったことを、

「望月の定理には矛盾があることを完全に証明した」

と理解するのも正確ではありません。

彼らが示したのは、望月氏の議論を通常の数学者が理解可能な形に再構成すると、
特定のステップで問題が生じる、という非常に具体的な批判です。

望月氏側は、

「そもそもその再構成がIUTでは許されない。
したがって、ショルツェが作った“簡略化されたIUT”に矛盾が生じても、
元のIUTに矛盾が生じたことにはならない」

と反論しています。

つまり、現在でも核心部分では
**「どちらの形式化・解釈が正しいのか」**
が争点として残っています。

数学哲学的に見ると、これはかなり興味深い「深い不一致」です。