今日の読売新聞編集手帳
まあまあか

https://www.yomiuri.co.jp/note/hensyu-techo/20260907-GYT8T00001/
9月7日 編集手帳
2026/09/07 読売新聞

 信用金庫の一般職で地道に勤めてきたけれど、30代半ばにして結婚も昇進もままならない。人生に「煮つまった」女性のひと夏を描くドラマ『すいか』(2003年)は脚本家・木皿泉さんの出世作である
◆主人公は偶然に飛び込んだ古風な下宿で個性的な住人たちと出会う。その一人から、世の中にはいろんな人が居てよいのだと諭され、問いかける。自分のような者も居てよいのかと。答えは簡潔だ。「居てよしッ!」
◆イラストレーターの亀石みゆきさんは、エッセー集『CINEMA TALK』にこう書いた。社会には、人よりお金を稼ぐとか役に立っているとかによって「居る」ことを許されるかのような価値観が渦巻いている
◆夏休み明けのこの時期、子どもの自殺が警戒され始めて何年になるだろう。居場所を失って行きづまり、若い命がこの世に「居る」ことを早々に手放してしまうのもそういう空気ゆえか
◆亀石さんは先月、亡くなった。数年の闘病を経てわが子の成人を見届け、旅立ったと聞く。こんな世相に、彼女が書き 遺 のこ した願いがある。「『どんな人も居てよしッ!』と思い合えるよう」