>>446 追加

情報幾何の生い立ち 甘利 俊一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bjsiam/11/3/11_KJ00005768851/_pdf
応用数理 2001
フォーラム
応用数理の遊歩道(26)
情報幾何の生い立ち
甘利 俊一
1 情報幾何の始まるまで
私にとっては,情報幾何は大学院修士課程の2
年のときに始まる.大学院に入ったころは,独学
でSchoutenの微分幾何の本(Ricci Calculus),
van der Waerden の Modern Algebra,それに
LefschetzのAlgebraic Topologyを読んでいた.
分からなくなると先輩の伊理正夫氏にしつこく聞
いたものである.しかし,講義の単位もある程度
は取らないといけない.こうして出席したのが,
統計学輪講であった.ここで,若き竹内啓氏が,
折しも出版されたKullbackのInformation and
Statisticsの紹介を始めた.そこでは二つの確率
分布の間にかの有名なKLダイバージェンスとい
う擬距離が提案されている.ところで,二つの分
布が近いときには,これはFisherの情報行列を
用いた2次形式で表せる.これはリーマン計量で
はないかと言ったのが森口繁一教授であった.
これは実はRaoのアイディアである.Raoは,
統計学の基礎として,リーマン空間の重要性に気
が付いた.その論文は,CulcattaJournalof
Mathematicsに1945年に発表された.後に
Cramer?Rao の定理と呼ばれる統計学の基本定
理もこの同じ論文に書かれている.
私は,この輪講のレポートとして,正規分布の
なす2次元の空間を取り上げ,リーマン計量(Fi?
sher 情報行列)を計算してみた.また,測地線や
曲率を計算した.程よい演習問題である.ところ
が,これが負の定曲率空間,すなわちボヤイとロ
バチェフスキーの考えた非ユークリッド空間にな
るのを知って,いたく感激した.このきれいな構
造の背後にあるものはなんだろう.また,確率分
布族の曲率は,統計学にとってどのような役割を
担っているのだろうか.
それ以後,私は多くの人にこの話をした.これ
が刺激となって吉沢正氏や滝山竜三氏の仕事が生
まれた,しかし自分では満足な仕事は何もできな
かった.

つづく