「暗黒整数」
 数学SF「ルミナス」の続編である。
まずは、抽象的な存在であるはずの数学が、逆に現実世界に影響を与えるというアイデアを理解、というか少なくとも納得しないといけない。
でないと、本当に何を書いているのかわからなくなる。
そしてわれわれが知っている数学体系とは別の数学、2+2が5になり、しかも首尾一貫した数学〈オルタナティヴ数学〉が存在するということも。
そこからもう一歩、数学体系が違えば、それを基盤とする互いに両立しない別の現実世界が、こことは違うどこかに存在するということ。
つまり多世界、並行宇宙の存在である。
それはわれわれ自身の世界と同じ場所に存在するかも知れない。
すぐそこにありながら、目に見えない、手の届かない幻の世界。
イーガンはその並行世界にインタフェースを持ち込む。
〈不備〉と名付けれたそれは、まだ未確定な定理で、矛盾した結論を導くようなものである。
それをどちらかの体系から証明すれば、矛盾は解消し、片方の体系が(そのローカルな局面においては)勝利する。
逆に相手側から証明されればこちらの負けとなる。
負けた場合、数学的な問題だけでなく、物理的なこちらの世界も最終的には消滅してしまうのだ。