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【問題】
 六年前の秋だ。女性しか入れない喫茶店にA子といっしょなら入れるとのことで入店し、コーヒーを注文した。
 いつものようにパスタも飲み物もA子のおごり。
 コーヒーカップの形状は円錐台を逆さにした形で、それはまるでいつかいっしょに見たモニュメント。
 とくに気にとめなかったわけではない。
 そうだ、通りを歩く人からは死角になるあのモニュメントに隠れて、暑い夏の日に抱きあっていた。
     ×     ×     ×
 A子はコーヒーは胃にわるいからと言って紅茶を注文した。
 ティーカップの形状は真横から見てまさに放物線y=x^2そのもので、飲み口の直径はちょうど深さの二倍あり、紅茶はほぼほぼすりきりいっぱい入ってた。
 A子はやっぱり紅茶も胃の調子がわるくて心配だと言って俺に譲った。
 やな予感がした。
 かつてウェイターをしていて赤ワインをまっしろなテーブルクロスにぶちまけたときの光景が脳裏をよぎる。
 コーヒーがだめで紅茶にしたはずなのに、紅茶もだめなのか?
 それとも俺に裕福な正社員の暮らしというものを思い起こさせたいのか——。
「あ」あろうことかティーカップは斜め45°に傾き、急いで起こしたがかなりこぼれた。
     ×     ×     ×
 以来A子とは一度も逢ってない。
 てか音信不通。
 いったい何%の紅茶がこぼれて還らないというのか、答えよ。