これいいね
https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/riken12.htm
物質科学の数学的手法と数理物理
June 15-17, 2012, 理研和光研究所仁科ホール
https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/riken2012.pdf
共形場理論の数学
河東泰之(Yasuyuki Kawahigashi)東大数理
2012 年6月17日,理研
そもそも数理物理とは何を指すのか.
本来,「物理」の部分が本体の名詞であり,「数理」はそれにかかる形容詞であるから,数学的手法を用いて,物理的結論(何とか粒子の質量を予言するとか)を導くべきであろうが,
そういうことを研究している数学者は非常に少ない.
実際に私を含めた多くの数学者がしているのは,物理的から来る問題設定,アイディア,技術などを用いた,
数学的に興味深いと思われる理論,問題の数学的研究である.
今日の話もその一つであり,共形場理論に関連して生じる数学的問題のうち,
ヒルベルト空間の上の作用素(演算子)のなす無限次元の代数構造に関連した問題を取り上げる.
もっと幾何学的なアプローチもいろいろあるが,そちらとの関係はあまりよくわかっておらず,今日は取り上げない.

代数構造とはたとえば,群,環,体,リー環などのことである.
これらがしばしば何らかの対象の対称性を表しているということは広く知られているであろう.
一番わかりやすいのは群の場合であり,
特に,有限群が物質の離散的な対称性を表しているとか,リー群がさまざまな理論の対称性を支配しているということはわかりやすい.
量子群もこの種のものの最新版の一つである.
一方,数学的立場から言えば,リー群とリー環の対応関係を明らかにするとか,有限単純群を分類するとか,コンパクト・リー群を分類するとか言ったことが,興味深い問題である.
こういった問題意識やその手法が物理に影響されたことも,またその結果が物理に役に立ってきたことも,
いずれもこれまでたくさん起きてきた.

純粋に数学的な立場から言えば群論の源はガロア理論である.
これはn次方程式の解の公式の問題から生じたものであり,本来群論のような代数構造とは別の問題に見える.
また,「3以上の素数が2個の平方数の和で表されるための必要十分条件は4を法として1に合同であることである」というフェルマーの古典的定理は,素数一つ一つに対する主張だが,
しかるべき代数構造を考えることによって証明が得られる.
このように,純粋に数学的な立場からも,群やその他の代数構造それ自体を研究することは,見かけよりずっと大きな応用範囲を持つことが少なくない.
このような研究は現在も続いており,例えば与えられた有限群を有理数体上のガロア群として実現せよ(ガロアの逆問題)という素朴な問題さえも,現在でも未解決である.

さてそこで,代数構造を研究する際に有力な数学的手法が表現論である.
たとえば,リー群SU(2)は,最初から2×2行列の集合なので,C2 に自然に作用しているが,他の複素ベクトル空間への作用(表現)を調べることが重要かつ有効である.

このように,何らかの代数構造が,(ベクトル)空間に作用する様子を調べることが表現論の一般的テーマであり,
今日の話でも重要な役割を果たす