つづき

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/137858
タイトル: [書評]ジュディス・ロビンソン=ヴァレリー編『科学者たちのポール・ヴァレリー』
著者: 森本 淳生 KAKEN_name
発行日: 1-Sep-1997
出版者: 京都大学フランス語学フランス文学研究会
誌名: 仏文研究
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/137858/1/fbk000_028_151.pdf
《書評》ジュディス・ロビンソン=ヴァレリー編
『科学者たちのポール・ヴァレリー』
菅野昭正,恒川邦夫,松田浩則,塚本昌則共訳,紀伊國屋書店,1996森本淳生
ヴァレリーと自然科学
ヴァレリーと科学,魅力的なテーマである。
同時に,驚きを誘うテーマでもあるかもしれない。
なぜなら,フランスにおいてすら,ヴァレリーは今だに,『若きパルク』や『海辺の墓地』の詩人,マラルメを継承する象徴派の末商のままだからである。
ヴァレリーが生涯にわたって書きつづけた『カイエ』は,詩の領域に還元できない多様な主題を含んでいる。とりわけ,数学,物理などの自然科学は,ヴァレリーの興味をつねにひきつづけた。「力線」や「相」がカイエに頻出することからもわかるように,マクスウェルの『電磁気論』(仏訳,1885−1887)やギブスのr化学系の平衡』(仏訳,1899)を読んだことは,彼の思想に大きく影響しているのである。
さて,ヴァレリーの科学思想に関しては,本書が刊行される1983年よりも以前に,すでにいくつかの研究がなされていた。Robinson−Valery自身,1963年に出版したL'Aalyse de l'esprit dans les Cahiers de Valery(Jose Corti)の中で,それまであまり明らかにされていなかったカイエの思想家としてのヴァレリーを正面から論じている。この本は30年たった現在においても研究書として価値を失っていないが,この中で彼女は,ヴァレリーの哲学言語批判,数学をモデルとした「科学的言語」の試み,論理実証主義との類似,ポワンカレの影響,非ユークリッド幾何や相対性理論に対する理解といったさまざまな視点から科学とヴァレリーの関係にせまった。とりわけ,集合,トポロジー,変換群,不変量といった数学概念,サイクル,相,エントロピーなどの熱力学概念,フィードバックを初めとするサイバネティックス的概念が,「厳密に科学的視点から」精神を分析するヴァレリーの試みの中で,どれほど決定的な重要性をもっていたかが極めて明確に示されている
(引用終り)
以上