生命誌  2016年12月
森重文×中村佳子
見えない世界を自由に描く

・森重文
実際の生物を理解するのに総合化する必要が出てくると思いますが、一番共通の道具として、普遍的に便利だからということですよね。
そういううまい概念を見つけて、それで研究するという立場に立つと、数学も同じようなことをしています。

・中村佳子
数学の歴史をよく知らないのですが、まったく新しい概念が、次々と出てくるのですか。


・森
そうですね。少し前になりますが私の専門の代数幾何の分野でも、スキーム、日本語で「概型」という新しい概念が出てきました。それはそれまでのものを置き換えるような概念でしたが、出るまでかなり時間がかかりました。本質が変わるわけではないのですが、本質をより分かりやすくするために、新しい概念が出てきたのです。

・中村
そうやって新しい概念が出てくることが続いて数学という学問が豊かになり、できあがっていくということですね。

・森
そうです。まだこれは確立してないですけど、所長をしていた数理解析研究所の望月新一さん[註2]が、ABC予想[註3]というのを解いたと証明を発表して、今世界中でそれをチェックしています。それは概型よりも多分もっと新しい概念を使っているだろうと考えられます。概型が出てきたのが1960年ぐらいで、その数十年以前は、いわゆる普通の数、複素数くらいまでしか見ていませんでした。それを置き換えるように概型という概念が出てきたように、それをさらに置き換えるようなものかもしれません。

・中村
60年代から今までの間の研究を踏まえて世界を膨らませる新しい概念をお考えになったのですね。

・森
そうですね。

・中村
素晴らしい。

・森
世界中で議論になっています。
非常に誇らしいですね。

・中村
先生のお話から、新しい概念が出てきたことで、世界が広がるのだろうなという気持ちになり、内容は分からないながら何となくワクワクします。