つづき

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J-STAGEトップ/数学/53 巻 (2001) 2 号/書誌
L2評価式とその幾何学への応用 大沢 健夫

§1 L2拡張定理と割算定理
いわゆる大沢・竹腰のL2拡張定理についてだが,今や筆者の数学人生においてはそれにまつわ
る思い出が何よりも貴重になってしまった.
Donnelly-Feffermanの定理(定理0.8)は1983年に発表されたが,筆者が初めてそれを知ったの
は1984年の10月,Wupperta1大学(当時西ドイツ)に滞在中のことで,竹腰見昭氏(当時京都大学
数理研の研究生)の便りによってであった.名もなき片田舎の雑誌の論文ならいざ知らず,この仕
事は泣く子も黙るAnnals of Math.に掲載されたものなのに,最もそれに関心を持つべき立場に
あった筆者が一年以上の間その存在に無知であったことは不思議なことである.このことを深く反
省してみると,自分がいかに主体性に欠けていたかを悟ることができる.Donnelly-Feffermanの
定理の証明の基礎になったオリジナルな計算結果は,微分幾何の視点からL2コホモロジーを扱っ
たDonnelly-Xavierの論文[Do-X]にあり,こちらは1984年に出たばかりであった.

筆者自身,竹腰氏に学位論文のテーマとしてKohnの仕事
を複素多様体上のベクトル束係数の場合に拡張することを示唆したほどである.

そこへ竹腰氏の手紙である.Donnelly-Feffermanの論文には完全に一本取られた思いだったが何とか気を取り
直すと,Bergman核の評価に関連する懸案の課題であったL2正則関数の拡張問題をこの新しい
方法を応用して解決し,それを竹腰氏との共著論文にしようと決意した.従ってそれ以後は
Wupperta1でこの問題を話題にすることを避け,一人でいるときはひたすらその証明のことを考
えた.帰国直前に証明を書き,Math. Zeitschrift誌に投稿したが,しばらくしてから証明に欠陥
があることがわかり,撤回した.

それから約一年間生活は荒む一方で れから約一年間生活は荒む一方で
その日は5時過ぎになってちょっとしたアイデアが浮かび,竹腰氏にオフィスに来てもらって議論した.
いつものように10分もたたぬうちに行き詰まってしまったが,その日は何となく近くに抜け道があるようで
すぐにはあきらめられなかった.とはいえ特に名案が出るわけもなく,ほどなく竹腰氏も立ち去っ
て行った.毎度のことゆえそう落胆もせず,しかし常よりは早めに帰途につき,近くの喫茶店で
コーヒーを飲んだ(そこは6時閉店であった.)するとそのとき,何かの霊顕でもあったかのように
それまでみたことも聞いたこともない式が頭の中に浮かんできた.すべてを氷解させたその式は
略
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(引用終り)
以上